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津田理子先生ピアノリサイタル [音楽]

 9/4(水)東京文化会館小ホールにおいて、チューリッヒ在住のピアニスト、津田理子先生のピアノリサイタルが行われました。とあるご縁から、何度かレッスンをみていただく機会があり、こちらのブログでもそのことについては毎回アップしています。リサイタルも毎回ではありませんが、出来るだけ聴かせていただくようにしています。

 先生のピアノのどこに魅力があるかというと、何の奇をてらうこともなく、ごく自然な感じに流れていく音楽(人によっては刺激が足りないと思うかもしれません。)いつも軽々と苦もなく弾いているように見えるテクニック、抜群の安定感ということでしょうか。そのお人柄も温和でゆったりとしています。レッスンの時も、ご自分の博識や技術をひけらかすようなことはなく、「あなたと同じように頑張っている」というスタンスで教えられます。

 今回のリサイタルでは、ヨハン・セバスチャン・バッハ ●トッカータト長調
            フランツ・シューベルト ●即興曲 作品142
            クロード・ドビュッシー ●子供の領分
            エンリケ・グラナドス ●詩的なワルツ集
                       ●エル・ベレレ(藁人形)
というプログラムでした。プログラムノートもご自分で書かれますが、それも先生らしい言葉で綴られています。

 まず、最初のバッハの第一音を聴いた時に、「あれ?」と思ったのは、座った場所が悪いのか、天候が悪いのか、調律が悪いのか、ピアノが鳴っていないなと感じたのでした。また、暗譜やテクニックの面で、ヒヤっとする場面が数カ所あったので、いつもの先生とは少し違うというような印象でした。

 次のシューベルトになっても、そんな印象でしたから、選曲ミスなのか、何かプライベートなことで集中出来ないようなことでもあったのか、ちょっと気になってしまいましたが、肝心の音楽という点では、やはり素晴らしいものがあったと思います。

 ミスがあったら音楽が良くてもダメなのか??ということは議論のあるところだと思います。確かに、コンクールではダメでしょう。でも、私は、演奏=その人となりであり人生であると思うので、やはりそういうものが良くも悪くも見え隠れする演奏が好きです。完璧を求めるならCDを聴けば良いわけですし。あまりにも完璧に弾かれると、完全武装で挑まれた感じで、何か拒絶されているような気になってしまうのですよ。こういう考え方は、ちょっと言い訳っぽいというか、甘いかもしれませんが。

 演奏会では、簡単に言うならば「あ〜この曲、弾いてみたい〜!」って思わせたら勝ちだって思っています。そういう意味では、今回のリサイタルで弾かれた曲で楽譜を持っていなかったものは、速攻入手しましたので、大成功だったのではないでしょうか。

 シューベルトの即興曲第4曲目は、プログラムノートにも書かれているように、面白いリズムを心から楽しんで軽やかに弾かれている様子が伝わって来ました。そして、シューベルトは難解で長くて苦手というイメージなんですが(私にとって)、このような小品を聴くと、この上なく美しく前衛的でもあり、面白いなあと思いますね。バッハにしろシューベルトにしろ、ドイツの音楽はやはり心が落ち着きます。しっくり来るっていうのかな。改めて、じっくりと勉強したいと思った曲ばかりでした。

 後半は、手を見るのは諦めて、ピアノの響きがダイレクトに伝わって来そうな席に移動してみました。が、やはり???な音でした。どうしたのかな?スタインウェイさん、調子が悪かったのかな?竜巻なんかがあったりして、天候も悪かったり、湿気にやられてたのかしらん??フォルテになってもイマイチ突き抜けて来る感じがなく、速いパッセージでは音が全部くっついてしまっているような、モヤーっとした印象でした。この日、聴いていた他の方たちの印象も伺ってみたいです。

 ドビュッシーの曲は、自分でも演奏して来た曲なので、こういう曲の場合、自分と違う所は「えっ??」ってずっこけますね。

 グラナドスは、私は全くの門外漢なので、よく分からないですが、2曲ともとても素敵な曲でした。スペインものという先入観は捨てた方が良さそうです。先生はハエンというスペイン南部の町のコンクールで優勝されたのが、キャリアの始まりなので、スペインには造詣が深いようです。それだけに、よく弾き込んでおられるような印象でした。スペインのグリーグと言われるとプログラムノートに書かれていましたが、そんな感じ。これは全曲を弾かなくてもちょっとしたコンサートに1曲はさむというような使い方も充分に出来る曲です。

 最後の藁人形という曲も、短いですがインパクトがあり、面白い曲でした。テクニックも披露でき、かつ、この曲を知らない人が聴いても面白いし、子供やコンサート初心者が聴いても飽きないと思いました。(最近、自分のコンサート事情から、そういう観点で選曲をすることが多くなってしまいました。)

 アンコールは3曲。終演後に曲名が張り出されなかったのが残念でした。先生の一言では充分に聞き取ることが出来ませんでした。1曲目はリスト、2曲目はグリーグ、3曲目はうーんと?忘れました(><)やはり、アンコールになると、一気に緊張感がほぐれ、音も伸び伸びして、弾いている方も聴いている方もリラックスして、本当に心から音楽を楽しめるものです。こればかりは、どんなベテランの方の演奏会に行っても変わらない光景ですね。不思議なものです。

 2曲目のグリーグの時に、先生が「毎日これを弾くと元気が出る、けど、とても難しい曲で暗譜で出来ないんです。」と言って、ペラって1枚の楽譜を置いて演奏されました。恐らく、アンコールも含め、今回のリサイタルで弾いた曲の中で一番簡単そうな曲。聴いた限りではそれほど暗譜しづらそうな曲でもなさそうです。それを、そんな風に言ってちょっと和ませるあたり、(別に狙ってやったことではないと思いますが。)その自然な気負いのなさが、私にとって心地よいことでもあります。

 と、まあ、ずらずらと思ったことを並べてみました。全体としては、時々、ヒヤっとする瞬間もあり、ちょっとドキドキしちゃったりもしたけど、それはそれで人間らしくて親しみが持てるし、(その程度のレベルのことであり、演奏にキズが付くという程ではなかった、ということでもあります。)曲はどれも素敵だったし、なかなかゆっくりと演奏を聴くような時間の取れない身としては、とても良い時間を過ごせたと思い、満足です。

 そして、いつものことですが、もっともっとピアノを弾きたいなあ、勉強したいなあという気持ちにさせられました。それこそが、私にとって演奏会を聴きに行くことの意義かもしれません。

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